田には大量の水が必要です。1ha(100m×100m)の水田で年間に使う水の量は日本平均で約2万m3(25mプール約50杯分)と言われています。
この水は多くの場合、川から引いてきます(明治用水は矢作川から)。下の表のように川の水にはたくさんの栄養素が含まれています。

これらの肥料分が毎日自然に供給されるわけです。さらに夏には水田の中に緑藻類が繁殖し有機物も供給されます。畑にはこうした働きはありません。
また、ヨーロッパなどの畑作地帯では地下水の窒素汚染が問題となっており、EU(欧州連合)では各国に対して基準値を設けて農地への窒素(重要な肥料)の投入を制限しています。
日本でも、水田の少ない鹿児島県や沖縄・奄美諸島では地下水の汚染が問題になっています。
ところが、水田にいる微生物には窒素を環境に無害な窒素ガスに戻す作用(脱窒効果)が認められており、「定量化は難しいが、水田の脱窒作用が日本の浄化にかなり役立っているのは間違いない(田淵俊雄・元東大教授)」と言われています。
日本では多くの地域で地下水が水道水として飲まれていますが(熊本市の水道は100%地下水)、これも水田のおかげかもしれませんね。
また、水田には大気中に含まれる有毒ガス、重油などを燃やすときに発生する亜硫酸ガス(SO2)やディーゼル車の排気に含まれる二酸化窒素(NO2)などを吸収し、無害な物質に還元するという驚くべき働きがあるのです。