「Bio:バイオ(ビオ)」は生命を意味するヨーロッパ系言語。日本でもバイオテクノロジー、バイオマス、ビオトープなどという言葉をよく目にするようになりました。「Sphere:スフィア」は球体、天体、範囲や領域を意味する英語。映画、小説、アニメなどでもよく登場します。したがって、「バイオスフィア」とは生命の星、あるいは生命が生存できる領域というようなことを意味します。
この実験は「バイオスフィア2」と名づけられましたが、では「バイオスフィア1」とは何でしょう?……もちろん地球のことですね。私たちの住んでいる地球は、広大無辺な宇宙空間の中で、(現在のところ唯一)たくさんの生命が存在する奇跡の星です。
このプロジェクトはもうひとつの地球空間(バイオスフィア)、つまり人間が自給自足で生存できるミニ地球を造る実験でした。
中に入ったのは8人とも科学者(医者も含む)。8人は2年間を無事に過ごしたものの、科学的実験としては失敗に終わりました。それは途中で酸素不足になり補給したからです。CO2の量も不足したり過剰になったりしました。また、植物は思ったほど成長せず、家畜も酸素不足からか多くが死ぬなど後半にはひどい食料不足になりました。いかに地球の生態系を模倣することが困難であるかが分かりますね。
熱帯雨林の木はすぐに枯れましたが、これは施設内では無風状態であったため木が自ら幹を太くしたり根を張る努力を怠ったためであることも分かりました。このように科学的実験としては失敗に終わったものの、多くの学問的成果を得ることができました。
「バイオスフィア2」の施設は現在でもアリゾナ大学が利用していますが、一般の人でも見学が可能です。また、この実験に参加した科学者たちの体験談は『バイオスフィア実験生活』(ブルーバックス)で読むことができます。
なお、同種の実験は日本でも(財)環境科学技術研究所でも行なわれています。
http://www.ies.or.jp/project_j/project02a.html